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日本青年団新聞2020年9月号6頁

リーダーと語る

紙面の都合上、日本青年団新聞9月号でお伝え出来なかった対談の全貌をこちらで公開いたします!


地域の良さに気づく



社会の様々な問題に対して最前線で取り組む人と、地域を中心としたテーマについて語り合っていく本企画。今年2月に山口県で農山村漁村の第一線で行われている実践の発掘をねらいにRebornこころのふるさとフォーラム2020(以下、フォーラム)を開催した。今号ではフォーラムの発表者としてご協力いただき、愛媛県今治市の大三島(おおみしま)で活動する鍋島悠弥さんにお話を伺う。今回はコロナ禍ということもありZoomを使い、フォーラム当時は参加者だった大崎常任も交え、対談を実施した。



半年ぶりの再会を喜び合う3人



(中園)2月のフォーラム以来となるので、約半年ぶりの再会ですね。お久しぶりです。2年前の平成30年7月豪雨では大三島も被害を受けたと聞いておりますが、今回の豪雨はいかがでしたか。



(鍋島)今回は避難命令が早めに出たこと、みんな警戒していた部分もあり、2年前ほどの被害は出ませんでした。



(中園)大きな被害が出ていないということでホッとしましたが、何が起こるかわかりませんのでこれからもお互いに気をつけていきましょう。地元のこともありながら、この日本青年団新聞の対談企画にご協力いただきありがとうございます。まず最初に、鍋島さんはどのような経緯で大三島に入ることになったのか教えてください。



(鍋島)出身は大阪府豊中市で、以前から興味があった環境保全について学ぶために近畿大学農学部に進学しました。在学中に沖縄県の離島地域を旅するなかで、次第にそこに暮らす人々や地域の魅力にとりつかれるようになりました。その後大学院に進学しましたが、研究者という立場から地域を客観的に捉えることにもどかしさを感じ、地域の中で住人と共に地域おこしに取り組みたいと考えるようになりました。大学院を修了するにあたり就職先を探していたところ、地域おこし協力隊の制度を知り採用面接を受けた結果、愛媛県今治市大三島への配属が決まりました。大学院を卒業してからすぐに大三島を訪れたのが2012年4月のことで、そこから3年間は協力隊として活動し、その後も定住し現在に至ります。



(中園)フォーラムでは「(地域に)肩までどっぷり浸かっていた」という表現をされていましたが、実際浸かるまではどうでしたか。



(鍋島)大変でした(苦笑)。地域のことは数年間研究してきたし、必要とされているから行くんだという自負がありました。しかしどんなに人付き合いを良くしていても、自分の気持ちが地域の人たちには透けて見えていたのだと思います。大三島へ配属されて半年が経ったころ大失敗をおかしました。集落のお祭りを軽視するような行動をとってしまい、結果、地域の方を怒らせてしまったのです。頭の中が真っ白になり、大阪に帰ろうかとも思いました。でも、その後しばらく経ったある日、年配の方が集落の青年たちを引き連れて僕の家に飲みに来てくれるということがありました。いろいろな話をする中で、僕の失敗についてちゃんと𠮟ってくれたのです。このお祭りのことをきっかけにして、地域に対し真摯に心を向けていなかった自分に気づきました。地域にとっての「よそ者」の自分に必要なのは、地域に住む一人の人間になるということ。それができなければ、本当の意味での地域おこしなどできないと感じたのです。



(中園)鍋島さんからの経験から、若者たちが地域に入る際に心がけるべきことは何だと思いますか。



(鍋島)地域性や本人のポテンシャルも関係ありますが、地域の一員となる意志を持つことが大前提であり、絶対条件です。その覚悟がないと全く話が進みません。移住者のなかには、地域のおばあちゃんに初めて会ってから一時間後には家の中に入れてもらえるような人もいます。逆に口下手な人でも、黙々と仕事を続ける真摯な姿を見てもらうことが信頼に繋がることもあります。大切なのは、地域と向き合おうとする意思を持つこと。地域が培ってきたものへの尊敬の思いを忘れないことです。僕は大三島に住み始めて9年になりますが、面倒くさいことや文句を言いたくなることもいっぱいあります。でも、その多くは地域が何百年も受け継いできたことの結果でもあります。



日青協Webサイトのみの掲載記事はここからとなります。



(中園)人と人とのつながりの中で、関わってくれた人を好きになることが大切だと僕も考えています。鍋島さんが地域に根付いていると感じる瞬間はありますか。



(鍋島)後から気づくことがほとんどですね。移住して2年目の年に、隣に住むおじいちゃんから大切な書類を役場に届けてほしいと頼まれることがあり、今思えばあれは信頼の証だったのかなと思います。ほかにも飲み会に呼ばれたりすることを含めて、地域のなかの日常の一人と認識されること。「あれ、いつもいるのに鍋島がいない」と言われるようになったとき、根付いていると感じました。



(中園)地域に根付いた活動をしている青年団の良さは何だと思いますか。



(鍋島)今、大三島には青年団がありません。昔は存在していて、現在40代前半の方々が島内最後の青年団の世代です。飲み会の席で語る昔話をいろいろ聞いていると、あまりに楽しそうで羨ましく思うこともあります。青年団は地域にとって大切な存在で、若者が集まる場に名前があることが重要なことだと感じています。すごく地域らしくて田舎らしいな、と。個人的な感想で申し訳ないのですが、青年団ってダサいイメージがあるんです。スタバとかカフェとか似合わない、みたいな。作業着を着ていて、汗が似合うオトコたち、そんな勝手なイメージがあるんです。でも、地域に根付く青年団だからこそ、露店を出して子どもたちと触れ合ったりすることができますよね。よそから来た人がいきなりそんなことをやるのは難しい。ダサさのなかに確かにあるかっこよさみたいなものが好きなんです。僕自身もそうした青年団へのあこがれもあるので、外作業の汚れなんかも気にせず、ダサくいたいです。地域にとって必要な存在、地域が培ってきたものがある証が青年団。そこがかっこいいと思っています。



(中園)嬉しいお話です。全国各地にはいろいろな青年たちが様々な活動をしています。青年団にはPRが苦手な人も多いのですが、今回のようにつながりの輪を広げていきたい場合のアドバイス等ありますか。



(鍋島)青年団は謎で、怖くて、厳ついお兄さんの集団というイメージがありました。たぶん、近寄りがたくて、本来の魅力が伝わりにくいんです。でも、実際に青年団が活動している場所に行くと、女性もたくさんいたり、家族で来ている方もいたりしています。関わりを通じて青年団のみなさんはとても家庭的で温かい存在だとわかりました。一方で、活動が停滞しているという話も聞きます。活動継続のために刺激が必要なのかもしれませんが、僕としてはそのままの青年団でいてほしいです。スマートになることも都会的なかっこよさも追及する必要はないと思っています。今ある青年団の根幹を大切にしながら、経験を上乗せしていくことが求められているのではないでしょうか。あと、移住者を勧誘することが結構大切ですよね。勧誘する際は役割をちゃんと決めた方が良いかもしれません。僕もそうなのですが、大体お酒を飲めばごまかせる。でも、こういう時にこういう役割が必要だからあなたのような人が必要です、と相手に伝えることが大切だと思います。最後になりますが、地域おこしの業界に青年団ががっつりと関わっていけたらいいですよね。今後は青年団や地域おこし業界の人材が意見を交わしていくことで、新たな地域づくりのかたちが見えてくるかもしれません。



(中園)青年団と協力隊などの青年たちが一緒になって各地域を盛り上げていきたいです。違う目線を持つ人たちが関わることで、化学反応を起こしていきたいと考えています。僕は青年団の一番の魅力は縁だと思っている。この縁を大切にし、是非今後とも一緒に活動していきたいです。ありがとうございました。

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